新型コロナウィルスの影響は賃貸経営にも?

新型コロナウィルスの影響により、仕事を失った場合や事業継続が困難となり、収入が激減する人が増えています。
家賃や借金など毎月の支払いへの不安を口にする方が多く、実際に家賃が支払えなくなる方も増えてきました。
新型コロナウィルスが賃貸経営に与える影響について、懸念されるリスクを検討していきましょう。

■家賃が支払えない人や事業者が増えている

新型コロナウィルスの影響で仕事が減って収入が減少する人やリストラされて収入が途絶える人、売上が激減して事業の継続が困難となる飲食店や企業などが増えていく中、家賃の支払いに窮するケースも増えており、今後、ますます増加することが予想されます。
家賃は毎月の支払いが必要なものであるため、新型コロナウィルスによる自粛や経済活動の停止が長引くほど、深刻化していくことでしょう。
そのため、今のところは正常に家賃が入ってきているから影響がないと思っていても、この先、家賃の滞納が起こる可能性は否定しきれません。

■家賃の支払時期の先延ばしや減額交渉の動きも

先延ばししても、家賃は毎月発生するので、どんどん支払われない額が積み重なっていくだけです。
そのため、減額交渉をされるケースも増えていますが、対応できるオーナーと難しいオーナーがいることでしょう。
家賃収入で生計を立てているオーナーや家賃をローンの返済などに充てているオーナーであれば、オーナーにとっても死活問題です。
一律給付の10万円が支給されても、家賃1ヶ月分程度にしかならず、いつまで続くか分からない新型コロナウィルスの賃貸経営への影響が払拭されるものではありません。

■空室リスクも大きな懸念材料

家賃が支払えなくなって賃貸住宅を退去するケースや事業継続ができなくなり、店舗の閉店や事務所の閉鎖によるテナント退去により、空室が増えるのも大きな懸念材料です。
家賃が支払えない個人と事業の廃業を決めた事業者はリンクするおそれもあります。
飲食店など新型コロナウィルスで打撃を受けている事業者は、個人経営の小さなお店も少なくありません。
売上の減少により貯蓄を切り崩して店舗を維持しているケースも多く、経営者家族が賃貸住宅に住んでいる場合、店舗のテナント賃料だけでなく、住宅の家賃も払えなくなるケースが考えられるためです。
もっとも、収入も途絶え、お店の設備投資などで借金も抱えているような場合、賃料の安い賃貸住宅に住み替えしたくても、敷金や礼金が払えない、引越し費用が払えないという問題やそもそも入居審査に通らないケースもあります。
となれば、家賃を滞納し続けたまま住み続けるか、最悪の場合、夜逃げ同然で行方不明となり、滞納した家賃の回収が困難となるリスクもあるでしょう。
そのうえ、空き室となり、入居者を募集しても、新型コロナウィルスによる感染への恐怖から住み替えを控える人や感染拡大防止の観点から地域をまたいだ移動が制限されることで入居者も現れない可能性が大きいです。
新型コロナウィルス問題が収束するまで、空き室として残り続け、その間、家賃収入がなくなるリスクがあります。
また、新型コロナウィルスの感染が不安材料となり、エレベーターなどの設備を共用するマンション暮らしへの不安が高まっているため、タワーマンションなどを賃貸している場合は、人気物件から一躍、空き室が埋まらない物件に陥落するおそれもあります。

■国や自治体から家賃の支払猶予を求められる可能性も

店舗の運営が困難となっている事業者を救済するため、国や自治体ではオーナーに対して減額請求に応じるよう求めることや支払猶予を認めるよう要請するといった動きも見られます。
もっとも、この事態がいつまで続くかまったく予想がつかない中、簡単に応じることはできないオーナーも多いのではないでしょうか。
オーナーもローンで物件を取得しているケースが多く、ローンの返済に窮する事態が懸念されています。
待ってあげたくても待てない状況があり、もし待つとなれば、オーナー自身がローンが払えなくなるかもしれません。
新型コロナウィルスの感染拡大が収束し、経済活動が元に戻らない限り、店舗を借りている人や住宅を借りている人もオーナーも共倒れになるリスクさえ現実化しているのです。
国や自治体では、オーナーに支払猶予などを求める代わりに、税金の減免などの特典を与えるといった話もあります。
もっとも、不動産投資を始めたばかりで減価償却が大きい方や節税対策のためにローンを借りて賃貸経営をしている方の場合、そもそも支払うべき税金がないか、少なく、有利には働かない可能性があります。
ご自身も本業で収入が減少している場合には、不動産所得の赤字と損益通算して還付を受けられる所得税額も減っており、十分なメリットが受けられないでしょう。
一方、賃貸経営は副業として行っている、ローンはないといった余裕のあるオーナーで、新型コロナウィルスの影響もなく、収入も減少していない方にとっては、賃料の滞納や減額、空き室になることで不動産所得の赤字を損益通算して、本業にかかる所得税をより多く取り戻せる機会になります。