ちょっと待った!その空室対策ほんとに有効?

分譲マンションの空室対策はオーナーにとって非常に重要ですが、空室になることを恐れるあまり、誤った選択をすることだけは避けるべきです。
賃貸市場は年々厳しくなっているとは聞くものの、地域差はあれどデータで見る限り入居率は高水準を維持しています。
判断を早まり、やみくもな手入れや安易な賃下げなどを実施することでかえって経営を圧迫することのないように、ここでは正しい空室対策について解説します。

■入居者のニーズ把握ができていないことが空室の理由

まず掘り下げて考えなければならないのは、なぜ空室になるのか、なぜ入居者が敬遠する分譲マンションがあるのかという点です。
そこには明確な理由があり、それを知らないままでは有効な対策は望めません。
もっとも、築年数は浅いほうが人気が高くなるため、これに関しては致し方ない部分もあります。
ただ首都圏を例に取ると、物件を見学したときに妥協する人が多いのもまた築年数です。
それでは家賃が決め手かというと、その事実は確かにあるものの、たとえ家賃が上がっても欲しい人気設備があることも事実です。
つまり、予算の範囲に複数の物件があったときに、最終的に選ばれるかどうかを決めるのは家賃の額ではなく、必要とする設備があるかないかが大きなウェイトを占めているといえます。
このポイントに気づいていないと、いつまでも空室のまま築年数が経過してしまうリスクを負うことになりかねません。
何より重要なのは入居者の真のニーズを知ること、何が求められているかを知ることです。

■入居者が欲しい人気設備とは

それではここで、リクルート住まいカンパニー(東京都港区)が首都圏で実施した「賃貸契約者動向調査」の結果を紹介しましょう。
まず最初に、家賃が上がっても欲しい人気設備です。
リクルート住まいカンパニーが2017年度に実施した調査によると、割合が一番高かったのが「追い炊き機能付きの風呂」(70.2%)、次が「エアコン」(69.6%)、「独立洗面台」(68.5%)となっています。
また、2019年に行った「次引っ越す際に欲しい設備」では、「エアコン」(71.7%)、「独立洗面台」(66.4%)「TVモニター付インターフォン」(58.9%)という結果でした。
実際に利用した人の「満足度の高い設備」は「24時間出せるゴミ置き場」(68.3%)で、一人暮らし世帯になると「宅配ボックス」(67.3%)もエントリーされます。
2人世帯ではやはり「追い炊き機能付きの風呂」(71.4%)、ファミリー世帯では「24時間出せるゴミ置き場」(66.2%)がそれぞれ1位にランクインしています。
これらの結果から、人気設備があればたとえ家賃が多少上がろうとも、入居者が興味を示すことがわかります。
さほど高い設備ばかりとは限らず、知っていればオーナー側も対処しやすい内容といえるのではないでしょうか。
逆に言えば、これらの条件でWEB検索がかけられた場合、設備がなければ比較の土俵にすら上がれない事態になってしまいます。
人気設備を知っているか知らないか、それだけで空室になるかならないかが決まってしまうとすれば、これは大きな問題です。

■人気設備の導入相場を知って空室対策

一般的に人気がある設備が導入されていないと、マッチングの際の検索にひっかからない場合や詳細条件を見る前に却下されてしまう可能性があります。
そのため、空室対策として平均的な人気設備は導入しておきたいところではないでしょうか。

・追い焚き機能付きの風呂

追い焚き機能付きのお風呂を追加する場合は、状況によって費用が違ってきます。
まず、追い焚き用配管を設置して、追い焚き機能を付ける場合は、50万円前後が相場になってくると言われています。
また、浴槽を取り払って、新たに設置するような場合は、100万円前後は覚悟しておかなければならないといえるでしょう。

・エアコン

エアコンの設置費用は、1万円前後になることが多いです。
新品なら1万円から1万5,000円くらいになってきますし、中古なら1万円くらいです。
また、エアコンの場合、設置費用のほかに商品の購入費用も必要になってきますので、これは賃貸の広さによって、まったく異なってきます。
さらに、性能にも左右されるので、予算に応じたエアコンを導入すると良いでしょう。
価格帯に関しては、中古品なども含めると、それぞれの予算に合致したものが必ずあるはずです。

・独立洗面台

独立洗面台は、そのグレードによって費用相場はさまざまです。
10万円前後から導入することができる安いものもありますし、20万円を超えるようなハイグレードなものもあります。
賃貸のグレードに応じて選ばなければ、部屋の中で浮いてしまいますので、適材適所で選びましょう。
また、中古品を活用すれば、もっと安く設置することができる可能性があります。
独立洗面台の費用相場には、設置費用や廃棄費用まで含まれていることが多いです。

・TVモニター付インターフォン

TVモニター付インターフォンの取付工事費用は数千円程度からやってもらうことができます。
商品によっては1万円以上かかるものがあるので、相場は状況によるといえるでしょう。
また、TVモニター付インターフォン自体の費用は、1万円から2万円程度のものもありますし、録画機能付のものだと5万円から8万円程度するものもあります。
このように設置する商品と状況によって相場は大きく異なってくるといえるでしょう。
また、TVモニター付インターフォンは、プロパンガスのリース会社が無料で設置してくれる可能性もあります。
交渉次第では、まったく費用をかけずに全戸に設置してもらえるかもしれません。

■ニーズを知り適切な空室対策が必要

家賃が上がることもやぶさかではないという声があるように、安易な家賃の値下げは有効な空室対策とはいえません。
ただし、オーナーが空室対策のため良かれと思ってリフォームや設備投資をしても、それが時代や入居者のニーズに合わなければ無駄な投資になってしまいます。
何が必要とされているのか、それはターゲットとなる入居者の年代や家族構成によっても変化します。
築年数や広さ、立地など変えられない要素に対し、設備は打つ手があるわけですから、是非十分な情報収集を行い、有効な手段として活用してください。