相続に伴い実家の一軒家やマンションを相続した場合、相続人それぞれがすでに生活拠点を持っており、誰も住む人がいなくなる場合があります。
もっとも、生まれ育った思い出が詰まった実家を売るのは忍びないとそのままにしておく方や定年を迎えたら地元に戻ってのんびり暮らしたいと、そのまま所有される方は少なくありません。
ですが、空き家のままにしておくのは、最もしてはいけない方法です。
それはなぜなのか、そして、どうするのがおすすめなのかをご紹介します。
■空き家にするのはNGなわけ
相続で一軒家やマンションを相続した場合に空き家のままにしておくのは、最も避けたいことです。
それはどうしてでしょうか。
まず1つ目として、コストが発生するからです。
空き家のまま所有していても、何も利益は生み出しません。
一方で、毎年、固定資産税や都市計画税を支払う必要があります。
長い年数、空き家にするほどコストがかさみ、赤字になってしまうケースも少なくありません。
2つ目の注意点は、誰も住まない家は劣化が進みやすいことです。
住まいというのは人が住めば汚れると思われますが、人が住まなくても傷んでいきます。
締めきった状態にすることで湿気で、部屋中がカビたり、シロアリが発生したり、家のダメージが進んでしまいます。
劣化を防ぐためには、月に一度程度、実家に足を運んで、窓を開け放って換気をしたり、ホコリを払うなどの掃除をしたり、ご近所に迷惑をかけないよう、庭の草刈りなどをしなくてはなりません。
実家が遠方にあるほど手間もかかり、交通費などもかさみます。
いつでも掃除ができるようにと、水道の契約などをそのままにしておけば、水道料金もかかり、管理のためのランニングコストも発生してしまうのです。
3つ目として、管理を行わずに放置すれば、倒壊リスクが高まったり、雑草が伸び放題となってご近隣からクレームが入ったり、不審者が入り込んだり、庭に不法投棄が行われるなど、地域の防災や防犯の観点からも問題が生じます。
空き家の放置が問題となると、行政から改善命令や解体命令などがなされる場合もあるので注意しなくてはなりません。
■どのくらいの必要がかかるの?
相続した家をリロケーションで賃貸物件として貸すには、通常はすぐに貸すことが難しいのが一般的です。
老朽化が進んでいてリフォームが必要、亡くなった方の遺品や家財がそのまま残されている、ホコリや汚れがひどいなど、すぐに貸すのが難しい状態にあるからです。
貸すためには遺品や家財の撤去、その後のハウスクリーニング、修繕が必要な箇所の補修や壊れている、老朽化している住宅設備の交換、状態によっては大規模なリフォームなども必要になってきます。
どのくらいの費用がかかるのかは、住宅の規模や築年数、状態や地域の相場によっても異なってきます。
どのような費用がどの程度必要になりそうか、よくあるパターンをチェックしてみましょう。
・家財の撤去や処分費用
相続した家に家財などがそのまま残されていては、貸すことができません。
遺産分割や形見分けにおいて相続人の間で分け、できる限り遺品を持ち帰ってもらうのもコストを抑えるための一つの方法です。
とはいえ、家財などは十分足りており、古くなった、壊れている品物は引き取りてもなく、多くが残されます。
ファミリータイプのマンションや一戸建てで、すべての家財の搬出や処分を依頼すると、業者や地域にもよりますが、30万円~60万円ほどかかります。
少しでも安く抑え、費用の支払いに納得がいくよう、複数の業者に見積りを依頼し、比較検討するようにしましょう。
・ハウスクリーニング費用
家財を片付けた後は汚れもあらわになります。
入居者が快適に住むためはもちろんですが、入居者をすぐに見つけるためにも内見時に好印象が残せるよう、ハウスクリーニングも不可欠になってきます。
ご自分で行うのは手間も労力もかかるうえ、長年の汚れは素人には落とせないケースが多いので、プロに頼むのがおすすめです。
ハウスクリーニングの相場も業者や地域によって異なりますが、ファミリータイプのマンションや一戸建て全体となると10万円を超えてきます。
キッチン、風呂場、トイレ、洗面所の水回りに限定した場合でも、7万円程度かかるのが一般的です。
・リフォーム費用
築年数の経った古いデザインの住宅は、現代のライフスタイルに合わせた設備やお部屋に変更することで入居者が見つかりやすくなります。
システムキッチンの交換は15万円~40万円程度、システムバス工事は50万~80万円程度、トイレ交換は15万円~30万円程度かかります。
また、クロスの張り替えは6畳当たり5万円程度、フローリングの張り替えは6畳当たり8万円程度が相場です。
現代のライフスタイルに合わせ、和室を洋室にリフォームするにはフローリング工事だけなら15万円~20万円程度、ふすまや押し入れ、床の間の撤去や壁など全体的に行う場合には6畳で60万円~80万円ほどが必要です。
■一時的に貸して有効活用を
一周忌や三周忌などが済んで、心の整理がついた段階で売りたい、定年退職する3年後には移り住んで来たいなどの予定があるなら、それまでの間だけ貸すという方法があります。
一定期間だけ貸す方法を、リロケーションと呼びます。
通常の賃貸契約では一度貸すと、最初に定めた2年や3年の契約期間ごとに更新がなされ、正当な事由がないとオーナー側からの解約が認められません。
自分が住みたいという事情があっても、立退料などを払わないと入居者に退去してもらうのが難しくなります。
これに対してリロケーションでは、定期借家契約を利用します。
定期借家契約は借地借家法の改正によって新たに設けられた制度で、最初に定めた一定期間だけ貸したら、それによって終了し、更新はなされません。
貸している間は家賃収入が入るので、固定資産税や都市計画税の持ち出しがなくなり、家賃設定によっては収益も生まれるメリットがあります。
実際に家を使い続けてもらえるので、日頃のお掃除などもしてもらえ、換気もしてもらえますから、締めきりによる劣化を防ぐことが可能です。
家の状態を維持しながら、家賃収入が得られ、余計なコストの負担を抑えられるのがメリットです。
相続した物件をそのままにしている人、どうしようか悩んでいる方は、まずはリロケーションで1年から数年程度を目安に賃貸物件として有効活用を図り、その後、どうするか、賃貸収入を得ながら、じっくり検討してみてはいかがでしょうか。